住宅ローン返済を楽にする「繰上げ返済」

間取り図、お金、計算機による資金計算イメージ
住宅ローンの返済期間は長く、最長で35年にもなります。何千万円もの借入額を毎月返済していくのですから、返済期間はどうしても長くなります。しかし、返済が進む中で、資金にゆとりができることは珍しくありません。そのときに返済を楽にする方法として、「繰上げ返済」というものがあります。

繰上げ返済の効果とニつの方法

住宅ローンは、契約時に月々の返済額とその返済期間を決めて融資を受けます。しかし、返済期間の途中で給料が上がることや、臨時ボーナスが出るなどして手元の資金に余裕ができることがあります。そのような場合には、約定額とは別にそのまとまった資金を返済に充てることができます。これを繰上げ返済といいます。

 

その効果の具体例を記します。仮に、借入額が3,000万円で返済期間を35年に設定、金利が固定で1.5%だった場合(元利均等返済)、返済額は91,855円で、総返済額は38,579,239円になります。

 

しかし、固定収入が増額されたり、臨時収入が得られたり、あるいはコツコツと節約に励み貯蓄額にゆとりができたとして、毎月の支払いとは別に10年後に100万円を繰上げ返済するとします。繰上げ返済は、支払った金額がそのまま元金の返済に充てられるので、11年目以降の利息分が当初予定よりも減額されることになります。その結果、11年目以降の総返済額は(残債)が、26,356,842円となり、繰上げ返済しない場合の27,556,600円に比べて、1,199,758円下がります。

 

では次に、繰上げ返済のニつの方法を見ていきましょう。

 

【期間短縮型】

一つ目は「期間短縮型」です。先ほどの効果事例で、総返済額が減ることがわかりました。総返済額が減って、繰上げ返済以降も当初予定通りの月額を返済していったとしたら、当然、それまで設定していた返済期限よりも早く払い終わることになります。このように完済年月を早める方法を「期間短縮型」と言います。

 

【返済額軽減型】

一方、先ほどの事例では、元々の返済額は91,855円でした。100万円の繰上げ返済後も返済期間を変えないとすると、総返済額が減ったのですから、毎月の返済額が減額されることになります。今回の例では、11年目以降の返済月額は、87,856円となり、約4,000円の減額が実現できます。このように、返済月額を減らす方法を「返済額軽減型」といいます。

繰上げ返済のメリット・デメリット

繰上げ返済イメージイラスト

繰上げ返済のメリットは、その方法でも記したように、

 

1. 総返済額を減らせること

2. 返済期間を短縮できること

3. 毎月の返済額を減らせること

 

です。「2」を選んだ場合は、その分老後の資金準備が前倒しできるなど、将来の不安軽減につながります。「3」は、毎月の生活資金にゆとりができるので、家計を安定させる効果があります。

 

次にデメリットを見ていきましょう。

 

【デメリット1:家計を圧迫する可能性】

一度繰上げ返済すると、取り消すことはできません。ですから、繰上げ返済をする金額は、余剰分だと思っても、先々必要になる可能性をよく考えて決めましょう。後に家計を圧迫したり、子供の進学などに必要な資金が不足したりしないよう、計画的に行うことが大切です。

 

【デメリット2:繰上げ返済後の団信の適用について】

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害により働けなくなったときに、住宅ローンの残債をゼロにしてくれる保険ですが、繰上げ返済に関するリスクについては、あまり知られていません。

 

例えば、繰上げ返済する前なら、団信の実行でローン残債の2,000万円が補償されるはずが、1,000万円の繰上げ返済後に、団信が実行された場合、ローン残債の1,000万円が補償されることになり、補償額において1,000万円の損をしている形になるのです。これに関しては、予測不可能な部分はありますが、繰上げ返済前後と団信適用の関連については知っておくべきでしょう。

 

【デメリット3:効果が低い場合がある】

例えば、返済期間の終盤で、残りの金額を退職金を利用して払い切ってしまおうという場合。住宅ローンは、借り入れた元金と利息を支払っていきますが、利息の方が金額が少ないので、当然、元金よりも早く支払いが終わります。つまり、返済期間の終盤では、すでに元金のみの返済になっている可能性が高いので、その時点で繰上げ返済をしても、最大のメリットである「総返済額(利息分)を減らせる」という効果が得られません。

繰上げ返済の注意点

繰上げ返済のメリット・デメリットを把握した上で、実際に繰上げ返済を行うに当たって、どのような点に注意をすればよいでしょうか。

 

【手数料について】

残債を全額繰上げ返済する場合には、金融機関の手数料が発生することがありますが、一般的には手数料がかからないことが多いようです。また、通常は繰上げ返済の回数に上限設定はないので、自分の資金状況を踏まえ、こまめに繰上げ返済をしても手数料無料ならば、利息低減には効果的です。

 

【計画的に行う必要がある】

例えば、勤務先の業績が堅調でボーナスが多く入ってきた、給料が増えたという事情から想定外に余剰資金ができたとします。確かに繰上げ返済は、時期によっては一定の効果が得られる方法です。しかしそのときこそ、ライフプランに立ち返って改めて資金計画を見直しましょう。

 

もしかしたら教育資金をプラスしておいた方がいいかもしれませんし、臨時の生活資金として備えておく必要があるかもしれません。ですから、現在から将来にかけての家族に必要なお金を今一度計画した上で、繰上げ返済を考えることをおすすめします。

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